認知症患者はなぜ「ゴミを隠す」の？対処法はあるの？

記憶障害と不安 認知症の患者は、記憶障害や混乱から来る不安感を抱いています。この不安感が、物を隠す行動の一因となります。例えば、自分の物が盗まれるのではないかという「物盗られ妄想」や、失敗を隠そうとする心理が働くことがあります。認知症の進行に伴い、記憶力が低下し、何をどこに置いたかを覚えていられなくなるため、物を隠してしまうことが増えます。

判断力の低下 認知症の進行に伴い、判断力や認識能力が低下します。これにより、価値のない物でも重要だと感じて隠すことがあります。また、過去の経験やトラウマから、ゴミや不用品を安全だと思う場所に隠す行動が見られます。認知症患者は、現実と記憶の区別がつきにくくなるため、過去の経験に基づいて行動してしまうことがあります。

安心感を求める行動 認知症患者は、物を隠すことで一時的な安心感を得ている場合もあります。自分の周囲の環境をコントロールしようとする試みであり、隠す行動がその手段となっているのです。これにより、環境への不安感を少しでも和らげようとしていることがあります。

具体例

体験談 例えば、ある家庭では、認知症の母親がゴミや古い新聞をタンスの奥に隠してしまうことがありました。これは、母親が大切な物を盗まれることを恐れての行動でした。家族が気づかないうちに、家の中のあちこちに隠し場所ができてしまい、対応に苦慮していました。このような行動は、認知症の進行とともに見られることが多く、家族や介護者にとっては大きなストレスとなります。

別の事例では、認知症を患っている父親が、自分の所有物を頻繁に移動させ、最後にはどこに置いたか忘れてしまうことがありました。家族は、父親が重要な書類や日常的に使うものを隠してしまうことに悩まされていました。この行動は、記憶障害と不安感が組み合わさった結果として生じています。

対処法

共感と理解 認知症患者の行動に対しては、まず共感と理解が重要です。例えば、物を隠していることに気づいたら、すぐに否定せず、「ここにあった物がなくなったのですね」と共感を示し、一緒に探す姿勢を見せることが効果的です。共感を示すことで、患者の不安感を和らげることができます。

隠し場所を把握する 物を隠す行動が繰り返される場合、よく隠す場所を把握しておくと便利です。例えば、タンスの引き出しや枕の下、仏壇の中など、定番の隠し場所を事前にチェックすることで、探す手間を省けます。隠し場所を予測することで、物を見つけるのが簡単になります。

代替品の用意 よく失くす物（鍵や眼鏡など）の予備を用意しておくと安心です。これにより、見つからない場合でもすぐに対応できるようになります。特に、重要な物は複数用意しておくことで、予期せぬ事態に備えることができます。

環境の調整 環境を整えることで、認知症患者が物を隠す行動を減らすことができます。例えば、収納場所を明確にし、使いやすい場所に配置することで、物を隠さなくても済むようにする工夫が考えられます。また、家の中を整理整頓し、物が見つけやすい環境を作ることも重要です。

専門家への相談 症状がひどくなる前に、専門家（ケアマネジャーや認知症専門の医師）に相談することも重要です。早期に正しい対応を学ぶことで、認知症の進行を遅らせたり、家族の負担を軽減したりすることができます。専門家のアドバイスを受けることで、適切な対応策を見つけることができます。

まとめ

認知症患者の「ゴミを隠す」行動は、記憶障害や不安感、判断力の低下から来ています。この行動を理解し、共感を持って対応することが大切です。また、隠し場所を把握したり、予備品を用意したりすることで、家庭内の混乱を減らすことができます。何より、困ったときには専門家に相談することで、適切な対応策を見つけることができるでしょう。認知症患者との生活は大変ですが、適切な対応と理解があれば、家族全体の負担を軽減することができます。